中ア中部 空木岳 (2863m) 2010年9月11日

所要時間 5:13 駐車場−−5:20 登山口−−6:35 池山避難小屋水場−−7:00 尻無−−8:45 空木岳避難小屋−−9:30 空木岳 13:16−−13:52 避難小屋分岐−−15:07 尻無 15:23−−15:40 池山避難小屋水場−−16:17 登山口−−16:34 駐車場

概要
 池山尾根より日帰り往復。夏山シーズンでもなく紅葉シーズンでもない中途半端な時期で登山者は少ないかと思いきや、駐車場は満杯を越えて路肩まで満杯となった。大半が日帰り往復で泊り客は少なかった。池山避難小屋の水場は出ていたが空木岳避難小屋前の沢は流れていなかった。山頂到着は9:30頃だったがまだガスはほとんど上がらず展望を楽しめた。早く下山するとクソ暑いので山頂でダラダラと過ごし、午後1時過ぎに下山開始。夕方近くで涼しくなり始めた頃駐車場に到着した。

地図クリックで等倍表示



 もう9月中旬も近いというのにまだ暑い! 週末は35℃近くまで気温が上昇するとのことで今週末もアルプス級に避暑に出かけることとした。ただし、日本海側から前線が南下し、東北や北陸は雨の予報で北ほど天気が悪いようだ。今週は北アは止めておいてできるだけ南を目指すことにし、本当なら聖くらいがいいのだが今年登っているので、最近登っていない中アの空木岳とした。中アは数年間登っていないし、空木の池山尾根なら山頂までのアプローチも比較的良くて幕営しても日曜日の比較的早い時間に下山が可能だ。最近やっている仕事は極度の集中力が必要で疲労が残っていると能率が大きく落ちるため、日曜はできるだけ早く下山したいところだ。ちなみに顕微鏡を覗いてやる仕事なのだが、作業は直接手作業なので細かい所が見えても指先を細かく動かすのは限界があるので、それこそ息を止めてやるような職人芸の世界だ。

 日帰りにするか幕営にするか悩んだが、のんびり過ごして涼しい時間を長く過ごすためにも幕営を考えた。いや、正確には避難小屋泊まりか。まだ気温が高く寒い思いをしなくて済むだろう。ただ、日曜日に前線が空木岳付近まで南下して雨が降らないかが心配だが、ネットのメッシュ予報では日曜日日中になると前線の雲が北に押し上げられて広範囲で晴れる予報となっていて、整合が取れない。どちらを信用すればいいのか・・・。車の中に幕営用の荷物も入っているので現地で考えればいいか。

 一時期より涼しくなってきたとは言えまだ下界でクーラーを使わず車中泊するのには暑く、土日\1000割引を捨てて通勤割引+αで登山口へと向かう。いつ来ても菅の台からの入口が分かりにくく今回も左に曲がるところを通過してしまった。別荘地に入ればあとは1本道だし標識もあって迷うことは無い。公園を通過してダートになると工事中の看板があったが通行止めではないようだった。ウネウネと標高を上げてゲート前の駐車場に到着、車が数台止まっているが主は今頃は山の上だろう。

 酒を飲みながらとりあえず避難小屋用装備のパッキングをしていると致命的失敗を発見! 何と日曜日の朝飯を家に置いてきてしまった!! 車の中にはラーメン等の予備食料はほとんど置いていないので困った。これから下界に買いに戻ることも可能だが睡眠時間が削られていしまう。下山後の栄養補給用に軽い1食分くらいは準備してあるのでどうにかなるが、これはパンなので暖かい飯とはならない。とりあえずそれでも構わないとして準備を済ませて寝た。

 翌朝、まだ暗いうちに起きだすと周囲は車でいっぱいで、なおも次々と車がやってきては駐車場に入らずに路肩に止めるようになった。予想外に登山者数が多く、まさかこのほとんどが日帰りとも思えず避難小屋が混雑しそうな予感で、急遽日帰りに切り替えることにした。この時間に出発したのでは山頂到着は早朝というわけにはいかず、ガスが上がって展望が無い可能性があるがしょうがない。

ゲート前駐車場は大混雑 登山口
林道から見た甲斐駒付近

 ちょうどヘッドランプが無くても歩ける明るさになった頃に出発、既に先行者の姿が見えている。東側には南ア北部の山々がシルエットとして浮かび上がる。今日はいい天気だ。登山口までの路肩や登山口付近の余地にも車が何台も止まっている。前回は途中で斜面に取り付いてショートカットしたが、今は半ズボンだし暑い中で藪に突っ込むのはイヤなので素直に登山道から登り始める。樹林中は暗いがライトが必要なほどではなくなっていた。

林道終点広場 朝日が射す登山道
サルオガセが垂れる 池山避難小屋の水場

 再び林道に出て旧駐車場に到着、最初は水平移動の登山道が始まり、大きくジグザグを切ってなだらかに標高を上げていく。ここもショートカットにちょうどいいのだが、笹が茂っているし急斜面で登りはつらいのでここも素直に登山道を行く。旧小屋等の分岐を通過し、傾斜が増した浅い谷筋を登ると池山避難小屋の水場に到着、先客が数人休憩中。ここでタオルを濡らし、今後のタオルへの給水用に少々水を汲んでおく。飲料は1リットルあるので登りは大丈夫、そして空木岳避難小屋で水を汲めるだろうからそれ以上は持ち上げなくていいだろう。前回は10月に登ったがそれでも水が流れていたので今頃だったら大丈夫だろう。

水場の少し上からシラビソ樹林に突入 標高1920mの登山道、遊歩道合流
マセナギ下の尻無山分岐鞍部 マセナギ北側を巻く

 遊歩道経由と登山道経由に分岐するがどちらでも同程度なのは経験済みなので登山道経由で登ることにする。ここまではカラマツ植林の下に笹が濃く茂った状態が続いていたが、水場から少し登ったところでシラビソ樹林に変貌するのと同時に笹がきれいさっぱり消えうせる。これからしばらくはシラビソ樹林の中を登ることになり、濃い日影で涼しく登れる。標高1920m付近で遊歩道と合流、さらに登ってマセナギ北側を巻く。前回はここで尻無山の方に下ったのだった。

今度は南側を巻く なぜか距離表示の数字が削られている。新ルートのため?
樹林の隙間から見た宝剣岳
新道の鎖場 新道のピークから見た宝剣岳方面

 2040m鞍部からグングン標高を上げ、危険地帯の看板が現れる。この先に大地獄、小地獄があるはずだが、梅雨明け前の大雨で登山道が崩れてしばらく通行止めとなっていたが、8月中旬に復旧したとのことがネットに出ていたが、ここには通行止め等の看板は出ていないので問題なく通過できるらしい。階段や橋を織り交ぜて痩せた稜線を進んでいくと、いつの間にか新しい雰囲気の登山道に入っていた。あれ? どこで旧道と別れたのだろう? たぶん旧道は崩壊して新道を切り開いたのだろう。旧道は稜線南を巻いていたが新道は稜線上を正直に進む。1箇所、露岩上に鎖がぶら下がっているが木に掴りながら左側の土の部分を上がった方が登りやすかった。ピークを越えると足場を組んだ上に何やらステージのような平坦な場所が作ってあったが資材置場だったのだろうか。その先で旧道と合流した。

崩壊して通行止めの旧道 樹林帯が続く
樹林の隙間から見た田切岳
樹林の隙間から見た烏帽子岳〜念丈岳の稜線
シラビソが低くなってきた 森林限界が見えてきた
階段の連続する個所から見た南アルプス(クリックで拡大)

 ヨナ沢ノ頭を南から巻いて再び稜線に上がり、以降はほぼ稜線上を登る。徐々にダケカンバが混じるようになり森林限界が近づいてきたことが分かる。かなり樹林の背が低くなったところで避難小屋と稜線伝いに空木岳に向かう分岐が登場、今までの水の消費量からして小屋の水場で補給する必要はなさそうだが、もしかしたら帰りに不足するかもしれないので水の状態を調べることも考えて小屋経由で登ることにする。

空木岳避難小屋分岐 避難小屋へと斜面を巻く
避難小屋から見た空木岳。小屋は広い谷底にある

 避難小屋までは斜面をトラバースするように進むが、地面に幹が寝たダケカンバを越えるところもありちょっと歩きにくい箇所がある。開けた平坦地に出れば沢と避難小屋はもうすぐで、砂礫地を横断して沢を覗いてみたが予想に反して水が無い! 今年の夏はあまりにもクソ暑くて東京では雨量は少なかったが、中アでも雷雨はこなかったのだろうか。でもたぶん少し沢を下ればどこかで水が出ているだろうが、そこまでして水を補給する必要性はないのでそのまま通過することにした。はたして昨夜ここで宿泊した人数はどれくらいだろうか。そして今日はどうだろうか。

避難小屋から上部は枯れた沢を登る 周囲がハイマツに変わる
振り返ると南アルプス

 避難小屋付近からは森林限界を超えて巨岩の林立する空木岳山頂が見えた。青空をバックにこれまた絵になる風景だった。さて、私が山頂に到着するまでガスが上がってくることはないことを祈ろう。枯れた沢沿いの登山道を登っていくが、前回丸山に登ったときは適当にここから逸れて左の斜面を登ったのだったがどこから取り付いたのかもう忘れてしまった。標高が上がるとダケカンバ→ナナカマド→立ったハイマツと植生が変わり、本当の森林限界を超えた。さすがにここまで休憩無しで登ってきたので疲れを感じるが、もう少しで山頂なのでこのままてっぺんまで行ってしまおう。

駒峰ヒュッテ付近から見た空木岳 駒峰ヒュッテを後にする

 駒峰ヒュッテで稜線上の登山道と合流、もう山頂は目前だ。花崗岩が風化した砂の斜面にジグザグに付けられた登山道を登りきると待望の空木岳山頂に到着した。

空木岳山頂(北側より) 空木岳三角点
空木岳から見た南駒ヶ岳 空木岳から見た田切岳
空木岳から見た南アルプス(クリックで拡大)
空木岳から見た西半分の展望(クリックで拡大)
空木岳から見た木曽駒方面(クリックで拡大)
空木岳から見た木曽駒周辺と北アルプス(クリックで拡大)
空木岳から見た空木岳避難小屋のある谷
空木岳から見た南アルプス鋸岳

 数年ぶりの空木岳はまだガスは僅かしか上がってきておらず大展望だった。残念ながら北ア核心部はこちらではなく北ア付近で雲が湧いて槍穂以外は見ることはできなかった。日光方面は八ヶ岳の向こう側だろう、どれだけ空気の透明度が高くても見ることはできない。木曽御嶽は早くも雲が絡んでいたが剣ヶ峰は頭を出していた。南アは入笠山から深南部の山までずらっと並んでいた。富士山は塩見岳と重なるように山頂部のみ見えていた。この時刻でこれだけ見えれば文句はない。

 このまま下ってしまってもいいのだが、今日も下界はクソ暑くて今から下り始めると気温のピーク時に登山口に下ることになってしまうので、登山口には夕方に到着するように涼しい山頂で時間調整することにした。山頂は西風が強くもろに風を受けると寒すぎるため僅かに稜線より東側で休憩した。昼寝はなかなか気持ちよかったなぁ。山頂は大賑わいというほどではなかったが、代わる代わる登山者が到着しては下っていった。中には弘前からやってきて、明日1日の休養後、今度は塩見岳という夫婦もいた。

駒峰ヒュッテ 山頂を振り返る
丸山の稜線
展望の尾根を下る まだ展望の尾根を下る
尻無から遊歩道を下る 林道終点の広場
林道終点広場から見た白根三山
林道終点広場から見た塩見岳付近

 午後1時を過ぎてそろそろ良かろうと下山開始。この時間でもまだガスに覆われることはなく、今日は夕立は来ないだろう。のんびり下っても大丈夫そうだ。帰りは駒峰ヒュッテから展望のいい稜線を下る。ここも白い花崗岩が点在し、なかなかいい雰囲気だ。なだらかに標高を落としていくと徐々に木の高さが高くなっていき、ガスではなく樹木で視界が閉ざされる。あとは淡々と下っていくだけである。時間調整のため尻無で少々休憩、最後の大きなジグザグ道は最後の1箇所で大きくショートカットしたら追い越された2人の前に「ワープ」した。

下山時の登山口 下山時の駐車場。だいぶ車がはけた

 駐車場に到着するとかなりの車が消えており、本日の大半の登山者は日帰りだったのだった。標高差は約1600mあるのでそれなりの健脚者しか日帰りはできないが、ここに来るのはそれなりの人だけということか。車に戻ってすぐ近くの沢で水浴びしてさっぱりし、涼しくなった駐車場でもう1泊して早朝の気温が低い時間帯に東京に戻った。

 

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